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パンと雑貨のお店・KETTLEさん「つくりたいのは、しあわせの瞬間」

「食べ物」と「雑貨」の両カテゴリーで製作を続けているKETTLEさん。浦和で経営している同名のカフェは、地元の人を中心に愛される人気店です。minneでも実店舗でも、ファンを増やし続けるKETTLEさんの「ものづくり」に込める想いをお伺いしに、カフェKETTLEへお邪魔してきました。

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そばにあり続けた、つくる喜び

ものづくりをはじめたきっかけから教えてください。

KETTLE 漠然と子どものころから、ものを自分でつくることはずっと好きでしたね。小学生のころも、教科がぜんぶ図工だったらよかったのに…!って思っていました。遊ぶおもちゃも自分でつくっていて、木を彫ってパンをつくったり、カレンダーを半分に折って、トングに見立ててお店屋さんごっこをしたり。ものづくりはずっと自分の生活にあるものでした。もしかすると、生まれたころからかもしれませんね(笑)

カフェをオープンすることが夢になったのも、そんな流れでしょうか。

KETTLE いいえ、大人になって就職したのは一般企業でした。版画など、ものづくりはずっと続けていましたが、それは自分がたのしむための趣味でした。でも、転職して、写真の仕事に就いたとき、現像など、自分が手を加えて完成していく過程がやっぱり好きだな、と改めて感じたんです。もともとの「つくることが好き」という気持ちが少しずつふくらんでいって、つくることが仕事になったらいいなって思いはじめました。

KETTLE 「いまの私にできることって何だろう」と考えて過ごすようになりました。「いま、この場所でできることってなんだろう」「いま、ここにはどんな人がいるだろう」ということをつき詰めて考えて、形になったのがカフェだったんです。カフェのオープンを目指してやってきたわけではなく、自分にできることを考えた結果がカフェでした。普通とは逆かもしれませんね。でも、実際にお店をはじめるまでは、おもちゃのパンしかつくれなかったんですよ(笑)。

店内に飾られた木掘りのオブジェはどれも、学校で特別に学んだわけではなく、子どものころの「遊び」を原点に生まれた作品たちです。

記憶に残る特別な場所に

お店の看板、そしてminneの作家アイコンになっているKETTLE(=やかん)のロゴはオリジナルの版画作品。「なんとなく掘ってみたら可愛かった」という軽いお気持ちから、店名&ロゴに決定したそう。

KETTLE カフェをやるなら「日常」をテーマにしたいと思ったんです。日常の中で、寄り道になれるようなお店になったらいいなって。寄り道をして自分の時間をちょっと持つことができるとか、寄り道をしたことで楽しい帰り道になるとか。そこで、ふと「寄り道で、パン一個でもあるといい」というフレーズが思い浮かびました。パンを片手に寄り道できたらすごくいいなと思いませんか?

「寄り道で、パン一個でもあるといい」。有名な詩か何かですか?

KETTLE なんとなく思い浮かんだフレーズです(笑)。私も子どものころに、よく寄り道をしていたお店があったんですけど、そういう場所って大人になってもずっと覚えているんですよね。親以外で愛情をくれたお店というか、ほどよくあたたかくて、特別な場所。そんな自分の体験を、自分のフィルターを通してちがう形にして、また誰かの何かになったらいいなと思いました。パンづくりは独学でいちから勉強して、2012年にKETTLEをオープンしました。

今ではパンの種類もたくさん。「つくることが好き」に加えて「食べることが好き」という気質だったため、パンづくりもたのしくマスターできたそう。贈答品にも人気のカヌレや、木の実など素材の味をたのしめるリュスティック、お惣菜パンなど、バリエーション豊か。

オンラインなのにあたたかい

2012年にスタートということは、minneと同い年ですね。minneをはじめたのはそのころですか?

KETTLE お店をはじめて、1年くらいしてからですね。最初は版画の作品だけをなんとなく載せていました。少ししてから、minneさんでフードのカテゴリーができて「オンラインで売るという方法があるのか!」と衝撃をうけました。実際に、minneでパンを売ってみて思ったのは、お店に来てくれるお客さまと、minneで買ってくださるお客さまが似ているということ。

版画を元につくられた紙雑貨もKETTLEの人気アイテムのひとつ。シンプルで可愛いミニ封筒やポストカードなど、ほっこりするデザインがラインナップ。

お客さんが似ている?

KETTLE minneはオンラインなので、お客さまの顔は見えないはずなんですけど、コミュニケーションを大事にされている方がたくさんいます。レビュー機能でも、味についてだけでなく「寒くなりましたけど、お身体に気をつけてくださいね」とお手紙のようなことばをいただくことも。普通のサイトでは、まず見ないですよね。うちはカフェが住宅街にあることもあり、街の人がちょっと寄って、おしゃべりをして、ということが多いんです。そういうコミュニケーションにすごく似ているなって思います。

一輪の花は「庭のお花を摘んできたの」とお客さまからのプレゼント。お店とお客さんとのあたたかい関係性が伝わってきます。

つくる人と買う人との出会いや、コミュニケーションはminneが大切にしている部分のひとつです。

KETTLE minneさんならではだなと感じます。実は私もminneでお店の什器を買わせていただいているんですが、無理を言って、木のサイズからオーダーさせていただいたこともあって(笑)。そのときも職人さんにすごく丁寧にご対応いただきました。いいものが届く、ということだけでなく、この人から買いたい、と思わせてくれる。とっても素敵なことですよね。

カウンターの棚や、ローテーブルなど、店内のあちらこちらにminne作家さんの作品が。ウッド調の什器は、店内のあたたかい雰囲気にしっくりなじんでいました。

KETTLE あとは、やっぱり人の手で心をこめてつくられたものが好きなんだと思います。実はこのカフェも、自分で絵を描いたものを大工さんに渡してつくっていただきました。壁は私も一緒につくりましたし、内装を含めて手づくり感満載になっています。

左側のキッチンスペースからはお客さんの様子がよく見える設計に。ランプの灯りもひとつひとつ優しくて、心地いいムードを演出していました。minneでのやりとりをきっかけに、カフェに足を運んでくれるお客さんも多いそう。

KETTLE 遠方から来てくださる方もいますし、先日は近所の方から「minneに載っていた新作のパンはありますか?」と聞かれて。こんなに近いのに、minneもチェックしてくれてるんだ!ってすごく嬉しかったです。

長時間発酵でじっくり

いちばん好きな、パン作りの工程をおしえてください。

KETTLE 発酵が終わったパンに、クープという切り込みを入れる瞬間です。切り込みを入れることで、焼きあがったときにパンがワーッと広がるんですよね。オーブンで焼いたときの、生地がふくらんで持ち上がって、開いていく瞬間がいいんです。

KETTLEのパンの特徴は?

KETTLE それぞれのパンに合った、こだわりの小麦を使っていることと、すべてのパンが長時間発酵であることです。つくる時間はかかっても、最低でも12時間以上寝かせることで、砂糖を入れなくても粉から甘味や旨味が出てきます。

数あるなかでも今、人気を集めているパンはどれでしょう?

KETTLE 春は桜あんぱんが人気です。ハサミで切り込みを入れた花びら風の仕上がりがポイント。こんがりもちもちした生地と、ほんのり甘い桜あんの風味が合うんです。さらに、中心のクルミと、甘じょっぱい塩漬けの桜のつぼみがほどよいアクセントになります。

KETTLE 桜のクッキーも再販を繰り返しています。入園や新生活などの贈り物にもぴったりで、「とにかく見た目が可愛い!」と好評いただいています。塩漬けされた桜のつぼみが、クッキーの甘さを引き立ててくれます。

ものづくりのおもしろさ

つくるうえで、大切にしていることは?

KETTLE おいしいものをつくる人、上手につくる人はたくさんいる。素敵な雑貨屋さんやカフェもたくさんある。だとすると、「自分だけができること」ってなんだろう?と考えたときに、「それほど特別ではないのだけれど、相手のことを想像して愛情を込めたおいしいものをつくりたいな」と思いました。目指すのは、「お母さんのおにぎりがなぜ一番おいしいか」というところです。もうひとつは、買っていただいたり、届いたときに、その人の時間が一瞬でもしあわせになっていただくことに、とことんこだわりたいなと思ったんです。それは、たとえばラッピングだったり、ちょっとした気づかいの部分。食べておいしいだけではなく、受け取った瞬間のよろこびもたいせつにしたいと思うんです。

KETTLE 箱の中を開ける前に、箱自体にときめくことってありませんか。うちのラッピング紙は、すべてオリジナル柄になっています。中身がひと目でわかるようなカードや、おいしく食べるポイントを書いた説明書を同封することも。どうしたら、もっとよろこんでもらえるかな、しあわせな気持ちになってもらえるかなって考えるとキリがなくて、いくらでも工夫ができる。そこがものづくりの面白いところ!

KETTLE もちろん、新商品をつくることや、素材の見直しなど、商品自体の改良も欠かしません。お店の近所に、こども園があるんですが、先生方や、お父さんお母さん、お子さんたちにはオープンのときからよく来ていただいていて、いろんなお話をします。お母さんといっしょに来てくれていた子どもが大きくなって、今度はひとりで来てくれることもあります。街の人たちとのコミュニケーションを大切にすると、だんだんその人たちの「好き」を知ることができたり、求められていることに気付けたりしていきます。そうしていくうちに、「こういうものが食べたい!」「こういうラッピングできますか?」など特別なオーダーが入るようになるんです(笑)。そのやりとりをきっかけに、新しい商品ができたり、求めていることに応えようとして、新しいなにかが生まれることもあります。

つくり続けるるうえで、悩まれることはありますか?

KETTLE たまにありますね。そんなときは、おいしいものを食べたり、素敵なカフェに行って、自分の「好き」を再確認します。やっぱり私はつくることが好きなんだよなぁ、好きでやってることなんだよなぁって。そして、丁寧なこと、想いが込められているものって受け取る側にしっかり伝わるんだということを改めて実感することで、パワーをいただいています。

今後の展望や、チャレンジしたいことを教えてください。

KETTLE 名前を広げることや、数を増やすこと、新しいことをはじめるのではなく、もっともっと想いが伝わる方法、想いを込められる方法をさがしたいし、見つけたいです。KETTLEのコンセプトに「ほんの一瞬の幸せを届ける」というのがあります。そのコンセプトの背景には、みんな人それぞれいろんなことを抱えながら頑張っているということを感じていて、大変なとき、辛いとき、悲しいときの中にも、ささやかな幸せを見つけられて、もう一度頑張ったりできる。いろんなことがある中で、また頑張れる「きっかけ」の一部にKETTLEもなりたいと思っています。みんなに頑張ってもらいたいなら、私自身がものづくりをし、それを通して伝えていくことを頑張り抜かないといけない、いまはそう思っています。


プロフィール

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KETTLE(藤尾愛子)さん

自家製のパンと焼き菓子、版画作品を中心にした雑貨を製作。やさしくあたたかい雰囲気で老若男女に愛される、同名のカフェも経営。