14,000の中から選ぶ「胸に残る作品」ーハンドメイドアワード2018ゲスト審査員5人の想い

「minneハンドメイドアワード2018」でゲスト審査員として、作品を審査いただいた佐藤友子さん、篠原ともえさん、鈴木修司さん、増田セバスチャンさん、森本千絵さんにお話を伺いました。受賞作品はもちろん、たくさんのノミネート作品について語っていただいています。

minneの「ハンドメイドアワード」

12月6日、「minneハンドメイドアワード2018」の受賞作品発表・授賞式は、たくさんの拍手と笑顔にあふれる、忘れられない1日となりました。
今年のコンテストの準備を本格的にはじめたのは、4月。たくさんのご応募とご協力を受け取りながら、気づけば今年も8ヶ月以上の月日が流れていました。

すべての作品に目を通し、すべての作品の想いをしっかりと読ませていただきました。さらに最終ノミネートに残った107点は、「ゲスト審査員」のみなさんにも、ひとつひとつじっくりとご覧いただきました。
 
「この作品を」と、ゲスト審査員のみなさんが各賞を選ばれた理由と、最終ノミネートに残った作品の感想を語っていただきましたので、ほんの一部の作品ではありますが、取材で伺うことができたすべてのご感想をお届けしたいと思います。

佐藤友子さんの理由

おつかれさまでした。全体を通して、どういう視点でご覧になりましたか?

佐藤さん
わたしたちが運営しているECサイト「北欧、暮らしの道具店」では、商品をセレクトするうえでたいせつにしている基準がいくつかあって。その中のひとつが「自分がほしい」と思えるものを選ぶ、ということなんですよね。なので、今日も「あっ、ほしいな」という気持ちが自然と心の中に沸き起こるか、をひとつのテーマにしました。

そうして選ばれたのが、「ヒンメリリース」。どういったところに心が揺れ惹かれましたか?

佐藤さん
実際に一目見たときに「ほしい!」とワクワクしましたし、普段の仕事と同じように、当店のお客様にも喜んでいただけそう!というところまで想像してしまいました。北欧では主に藁でつくられる「ヒンメリ」というモチーフを真鍮素材で表現されていることに、まずひとつ驚きがあって。さらに、通常モビールのように吊るして飾るヒンメリに、「リース」という要素を重ね合わせることで「壁飾り」として成立させているという、発想のクレバーさにも心打たれました。「リース」だけどカントリー過ぎず、素材の組み合わせでとてもクールでかっこいい印象を受けますよね、素敵だと思いました。
北欧インテリア 真鍮製の1年中飾れるヒンメリリース / brass_himmeli

佐藤さん
真鍮と植物の組み合わせなのでとっても軽くて、我が家のような賃貸の住宅にも気兼ねなく飾れるという配慮もすごくいいなと感じましたね。

心遣いのある作品ですね。

佐藤さん
そうですよね。こういったインテリアのアイテムって「ないと困るもの」ではないかもしれません。でも、わたし自身そうなのですが、たとえば仕事や子育てや家事や…忙しい毎日に奮闘する中で、ふと目に止まったとき「好きだなあ」「いいなあ」って思えるものに心を和ませてもらうことって本当に多くて。そういうパワーをくれる作品だと思いました。

ぜひ、他の作品も心に残ったものをおしえていただきたいんです。

佐藤さん
たくさんありましたが、「ひとふでカレンダー」すごいですね〜。ちょっともう「この発想、天才だなあ」と思っちゃいましたね(笑)。

見入ってしまいますよね。すべて一筆書きで、さらにしりとりになっている。

佐藤さん
素晴らしいですよね。カレンダーって選ぶにしても作るにしても世の中にたくさんの選択肢がある中で、この作品はコンセプトのおもしろさとデザインのトーンのバランスがよいと思いました。モノクロのイラストが丁度心地よくマッチしていてインテリア的にもすごくいいですし。作品に工夫や魅力がつまっていて、語れるストーリーがいっぱいあるのもおもしろいですよね。

説明しがいがありますね。

佐藤さん
そうそう、それって大事ですよね。ちょっとちがう視点で「【福祉器具】ワンハンドトイレットペーパー​」も素晴らしいと思いました。これも、「ねぇねぇこれってね」と、良さを説明したくなる作品ですよね。​片手でトイレットペーパーが切れる、という明確なソリューションを提供できるんだけれども、そのデザインが、私が想像した「福祉器具」とはすこし違っていてナチュラルで洒落ている。

2つの課題解決ができているように感じる作品ですね。

佐藤さん
そうですね。ある人にとってはとても助かるものですけど、ちがった側面も配慮できていて、やさしい気持ちになりました。目にしたときに、わーっと心がときめく作品が本当にいっぱいでした。ありがとうございました。
佐藤友子
「北欧、暮らしの道具店」店長

1975年生まれ。運営会社である株式会社クラシコム 取締役。インテリアコーディネーターなどの仕事を経て、2007年に実兄とクラシコムを共同創業。人の暮らしにポジティブな影響を及ばせる仕事がしたいとの気持ちで、「北欧、暮らしの道具店」の商品・コンテンツ・サービスの全てを統括している。一児の母。
https://hokuohkurashi.com/

篠原ともえさんの理由

おつかれさまでした。全体を通していかがでしたか?

篠原さん
ハンドメイドアワードは、毎年審査に参加させていただいているんですが、とっても刺激をいただける、年に1度のたいせつな場所になってきています。今回もたくさん刺激をいただきました。

選んでいただいたのは「プリンセス・メデューサの物語ブローチ」。どういったところに魅力を感じられましたか?

篠原さん
まず作品を見た瞬間に、この細やかな手仕事とかけられたであろう時間と、なにより作品に対する熱い思いが胸に伝わってきましたね。この作品は物語になってますけれど、ご自分で脚本を書いて制作されているということで。まるで映画監督のようなつくり方ですよね。とてもおもしろいと感じました。ファンになってしまいましたね。

実際につけていただいて。

篠原さん
そうなんです。びっくりしたのは、作品自体がとっても軽いんですね。「服がひっぱられないように工夫しました」とのことで、作家さんの女性らしい細やかな心遣いにも感動してしまいました。
プリンセス・メデューサの物語ブローチ / ムムリク舎

他にも、たくさんの作品をご覧いただきました。

篠原さん
そうですね。どれも本当に素晴らしくて。作家のみなさんには、作品を通して世界中に、そしてひとつひとつがいろんなひとの心に届くようなものづくりを続けていただけたらなと思いますね。

篠原さん
とてもたのしかったです、ありがとうございました!
篠原ともえ
タレント・アーティスト

1995年歌手デビュー。個性的なキャラクターとカラフルな「シノラー」ファッションを生み出し、90年代ティーンのアイコン的存在に。タレント、女優、ナレーター、衣装デザイナーなど多彩な才能を開花させる。イラストレーションやデザインも得意とし、自身プロデュースの着物デザインや、松任谷由実や嵐のコンサート衣装、藤あや子のCDジャケット衣装デザインも手がける。書籍『ザ・ワンピース2』『ザ・ワンピースfor KIDS』(ともに文化出版局)、「篠原ともえのハンドメイド~アクセサリー&ファッション小物77」(講談社)、「御朱印をはじめよう」(枻出版)発売中。
http://www.tomoeshinohara.net/

鈴木修司さんの理由

おつかれさまでした。今年は、どういう視点でご覧いただいたでしょうか。

鈴木さん
今回で気づけば3回目なんですよね。年々、全体的なクオリティはますます高くなっていて、もう…すべて素晴らしいんですよ。どれもいい。なので、「アイデア」をさがしましたね。

それは「発想」や「企画力」のような。

鈴木さん
そうですね。「他の人とちがう」ということが、ぼくの選んだひとつの基準でしたね。

選んでいただいたのは「アレルギーバッジ」でした。

鈴木さん
はい。いま本当にアレルギーで悩んでいるひとは多いですけど、そのネガティブな問題をポジティブでポップなデザインに転換できているところが、とっても「うまいなあ!」と感じましたね。ぼくはバイヤーなので、「お店で売った場合」をやっぱり想像するんですけれど、これは即戦力だと思うんですよ。非常にデザインのまとまりもよくて、これからの可能性を感じるような作品でした。
ALLERGY BADGE アレルギーバッジ / gravo

デザイン面での魅力は、どういったところでしょう。

鈴木さん
まずは、わかりやさですよね。これでもか!というぐらいにシンプルなので、これは子どもにも大人にも外国の方にも伝わるんですよね。それに次の展開が目に浮かびますよね。たとえばイスラム教のハラルの人とか。宗教やいろいろな理由で食べられないものって、世界にはたくさんありますからね。シリーズで幅を広げて使ってもらえる、それが世の中の課題を解決してくれる、すごくいいと思いましたね。

そのほかの作品で、心に残ったものをぜひ。

鈴木さん
水風船巾着」は売れますよ、きっと人気が出る。これも、考え方やデザイン自体はとてもシンプルなんですけど、「遠目から見ると、水風船を持っているように見える」というのは、本当に素晴らしくてよくできている。

浴衣と合わせるのもいいし、ポップなお洋服にも合いそうですね。

鈴木さん
そう、普段着にもね。ギフトとかにもいいだろうし、とってもいいと思いましたよ。「仕事の疲れを癒す、なでる文房具」もね。すごいなあと思いましたよ。この作家さんが、動物のこういう愛らしいひとつひとつの仕草がとっても好きなんでしょうね。

シーンの切り取り方が、すごいですよね。

鈴木さん
うまいですよねえ。うちも猫を飼ってるんですけど、寒い季節に丸まってる姿なんてたまんないですから(笑)。これはとっても癒されますよ。

去年、鈴木さんに選んでいただいた作家さんもとても活躍されています。

鈴木さん
OTOOTOさんね。よかったですよね、本当に。その後のご活躍を聞けるとやっぱりうれしいですから。このバッジはどんな方がつくられてるんだろうなあ。この作品はそこが見えないのもまたちょっと魅力というかね。どんなひとなんでしょう。次の展開もすごくたのしみです、ありがとうございました。
鈴木修司
BEAMS JAPAN バイヤー

1976年生まれ。三重県松阪市出身、鎌倉在住。1998年にビームス入社。メンズ重衣料からメンズカジュアルウェア、そして“fennica”の前身である“BEAMS MODERN LIVING”の店舗スタッフ、その後に“fennica”のMD、“B:MING LIFE STORE”のバイヤーを担当、現在は“BEAMS JAPAN”のバイヤーに従事する。
https://www.beams.co.jp/beams_japan/

増田セバスチャンさんの理由

おつかれさまでした。今回がはじめてのご選定でしたが、みなさんの作品はいかがでしたか?

増田さん
素敵なものがたくさんありましたね。なのに、なんだかすごく早く決まってしまって(笑)。

驚きました(笑)。

増田さん
すべてしっかり拝見させていただきましたので(笑)。ただ、コンセプトがわかりやすいもの、という基準も持って選ばせていただいたので、そのスピードにつながったところはあるかもしれませんね。やっぱり「作品」は、「言葉」をビジュアル化したものだと思うので。

やはり、「仕事の疲れを癒す、なでる文房具」は伝わるものがありましたか?

増田さん
そうですね。もうひとつ、「海外の友人にお土産にするならどれにしようか」という目線も今回の審査の基準としてたいせつにしていたんですよ。「癒し」というコンセプトも伝わりますし、この緻密なつくりというのは海外の友人たちの驚く顔や喜ぶ顔が目に浮かびますね。

普段から「お土産」はお持ちになるんですか?

増田さん
日本を感じるような、抹茶のお菓子だとか、そういったものを持っていくことも多いですね。ギャラリーのアート関係の方々に持っていくので、こういった作品もとても喜んでもらえると思うんですよ。日本ならではの、繊細で緻密なものって人気が高いんです。海外には海外の、アイデアやダイナミックな良さがありますけど、この繊細な美しさは日本にしかないですね。
仕事の疲れを癒す、なでる文房具 / yucoco cafe

気になる作品は、ほかにもありましたか?

増田さん
箱寿司 HAKOZUSHI」も同じ観点で、とても素敵だと思いました。あと紙でできているものって海外で結構喜ばれるんですよ。

折り紙だとか。

増田さん
そうそう。紙製で繊細なもの、というのは海外にはあまりないので。おもしろい作品だと思いましたね。あとは「くるみの森 / どうぶつアクセサリー」も。やっぱり、ファッションはコミュニケーションだと思っていて。「なにそれ?」って聞かれて、「こう開けるの」って開けば、あの動物たちがぴょこんと出てくる。そうすれば、もうそこでたくさんの会話が生まれますよね。そういうものって素晴らしいと思います。

増田さん
いま挙げた3つの作品の作家さんは、ぜひ海外の展示会とかにも出品いただきたいですよね。遜色ないクオリティの方を3人選んだと思っています。

グローバルな活躍を。

増田さん
そうですね。造形だけではなくて、文房具であったりアクセサリーであったり、使用用途がプラスされた、いい作品だと思うので。
ぼくも、普段パソコンで作業する仕事も多いですが、やっぱり「手」でつくるのが好きで。作り手の魂とかエネルギーが注がれると信じているので、今日はとてもいいものを見せていただきました。
増田セバスチャン
アーティスト/アートディレクター

演劇・現代美術の世界で活動した後、1995年にショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」MV美術、「KAWAII MONSTER CAFE」のプロデュースなど、原宿のKawaii文化を軸に作品を制作。2014年よりニューヨークを中心に個展を開催。2020年に向けたアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」を世界10都市で展開中。著書『世界にひとつだけの「カワイイ」の見つけ方』。京都造形芸術大学客員教授、ニューヨーク大学客員研究員、2017年度文化庁文化交流使。
http://m-sebas.asobisystem.com/

森本千絵さんの理由

昨年につづき、ありがとうございました。今年はいかがでしたでしょうか。

森本さん
心のこもった素敵な作品がたくさんあったんですけれど。すごく迷ったというよりは、「これとこれ!」って、もう2つが本当に気に入ってしまって。そこからが、本当に悩んで悩んで。

まずひとつめは、今回選んでいただいた「//七宝焼き//”Butterfly man”brooch.」。

森本さん
はい。もう、この小さなバタフライマンのブローチに出会った瞬間、しばらくの間、立ちつくしちゃいましたよ。こんなに小さな作品ですけど、なんとも言えない表情で語りかけてくるようなそんな存在感で。「バタフライ」と言っても、羽は広げてないし、すこし傾いて、休んでるのか、とぼとぼと歩いてるのか、いまなにを考えているのか、この主人公の物語が本当に気になってしまうんですよ。きっと前後にお話がある。絵本から飛び出してきたような作品ですよね。
//七宝焼き//”Butterfly man”brooch. / さとうゆうき

すっと引き込まれるような。

森本さん
そう。「七宝焼き」の技術との相性がまた絶妙で、この作品が持つ「不思議さ」をうまく醸し出せていますよね。伝統工芸でこんなにユーモアのある新しい表現をされていて。命をこめてつくっている感じがとても伝わってきて、今にも動き出しそうに感じますよ。恋をしました。

森本さん
この作家さんのギャラリーも拝見しましたけど、これ以外の作品もぜんぶ好きでしたね。ぜんぶ「途中」なんですよね。

途中。

森本さん
それは「日食」だったり、「羽を閉じてるところ」だったり。ふつう、いちばん華やかな「完成の瞬間」だったり、ゴールを描くでしょう。しかも、「七宝焼き」という重ねて重ねてつくりあげる技術であれば、一層みんなに伝わりやすい部分を表現したくなりますよ。

だけど、そこを切り取らない。

森本さん
だから気になる。そうなんです。なんとも言えないこの表情を、まるで一時停止したみたいに見せられてしまうの。それを表現する技術も本当に素晴らしい。こちらに話の続きを投げかけてきているし、この命を見つけられるかという。

試されている感じを受けられたんですね。

森本さん
そう、だけど見つけることができた、という。やっぱこれが七宝焼きだからなのか、すごく上品でいいですよね。削ぎ落とされたことでバランスがとれていて。手づくりの技術として、とても美しいと思います。やっぱり手作業の原点って、絵を描くことじゃないですか?それを思い出させてくれる、物語は白い紙から誕生させるものですもんね。ぜひ会いたいですよ。ああ、かわいい。

そしてもう1作品。とても悩まれていました。

森本さん
真夜中のメリーゴーランドワンピースとヘッドドレス」。すごくすごく悩みましたね。やっぱりこれも、絵本のような世界に引きこまれる作品で。物語があるんですよね、それをとても感じます。実際に子どもが着ても、独特な世界観を放つ服なんだろうなって思いました。丁寧で素敵な作品でした。

森本さん
あとは、「春色のおひなちゃん・SAKURA」もやっぱり素晴らしいですよ。

本当にひとつひとつが細くて素敵ですよね。去年も、nine-Dさんの作品について、ご感想をいただいて。

森本さん
そう!バスもよかったです。やっぱり、贈りものとしてもすごく素敵だしね。これは、本当にみなさんに褒めてもらえるような素晴らしい作品だと思うんですよ。たくさんの方を喜ばせることができるものですよね。
みなさんの、「つくりたい」という思いと、誰かのために送るようなラブレターみたいな気持ちがたくさん伝わってきました。ありがとうございました。
森本千絵
株式会社goen°主宰 コミュニケーションディレクター・アートディレクター

1999年博報堂入社。2007年goen°設立。NHK大河ドラマ「江」、朝の連続テレビドラマ小説「てっぱん」「半分、青い。」のタイトルワークをはじめ、Canon、KIRINなどの企業広告、松任谷由実、Mr.Childrenのアートワーク、映画・舞台の美術、動物園や保育園の空間ディレクションなど活動は多岐に渡る。2011年サントリー「歌のリレー」でADCグランプリ初受賞。伊丹十三賞、日本建築学会賞、日経ウーマンオブザイヤー2012など多数受賞。
http://www.goen-goen.co.jp/

受賞されたみなさん、おめでとうございました。そして参加してくださったすべての作家さんに、心からのお礼を伝えたいと思います。素敵な作品をありがとうございました。

取材・文 / 中前 結花  撮影 / 真田 英幸