【今月の道具】ターナーのアクリルガッシュ

毎月、ものづくりに欠かせない「定番のアイテム」を1品だけご紹介する連載「今月の道具」。今回は、学生時代に授業で手に取った方もきっと多い、ターナー色彩の「アクリルガッシュ」をご紹介します。クリエイターが選ぶ画材としても定番となっている同商品。ご応募いただいた方の中から抽選で限定版のプレゼントも。

応募はこちらから

慣れ親しんだものを大切に

「普段から使われている道具を見せてください」取材で工房に伺わせていただくと、いつもそのようなお願いをします。

ー 学生時代からずっと同じものを使ってるんですが…

そう言って、水入れやパレットを見せてくださる作家さんが多いことには、いつも驚かされます。なかには「30年近く使っているんです」とお話してくださる方も。「これは良い」と信頼の置ける慣れ親しんだものを、永く大切にされている様子がよくわかります。

小学校時代の「図画・工作」や、中学生からの「美術」で誰もが必ず通る「水彩画」。今回ご紹介するのは、水入れやパレットと共にその相棒となる「絵具」です。美術の先生が教材として選ばれることも非常に多い、ターナー色彩の「アクリルガッシュ」。子どもから、プロのクリエイターまで、幅広く愛用されている定番商品の魅力に迫ります。

色と遊ぶ「カラースパイス」

お邪魔したのは、ターナー色彩株式会社が運営するショールーム「ターナーカラースパイス」。塗り見本や塗料サンプルが200色以上並ぶ棚など、その商品種類の多さや各塗料の質感、使用時の微臭性まで、その場で体感できるようになっています。
 
ターナー色彩株式会社の亀井さんに詳しいお話をうかがいました。


 

この棚は圧巻ですね。普段から使用させていただいている商品も多いのですが、この色種類の多さには驚きました。
亀井さん
ミルクペイントだけでも16色のほかに下地材や、最近では「ミニサイズ」もご提供しているので、種類がとても多いですね。幅広い用途でお応えできるように、開発・販売をすすめています。

眺めているだけで、とても充実した気分になってしまいます(笑)。ここには「アクリルガッシュ」は見当たりませんね。
亀井さん
そうなんです。ターナーでは「画材」と「塗料」という分け方をしていて、ここに置いてあるものは、一般的にホームセンターなどで売られている「塗料」や、画材カテゴリとの中間に当たる「DIY商品」などです。主に絵画などで使われる、文具店や画材専門店に置いてあるものが「画材」。アクリルガッシュは「画材」なので、今回はご覧いただきたいものをお持ちしました。

見たことのない、素敵なパッケージですね。特別なものでしょうか?
亀井さん
これは、イラストレーターの中村佑介さんに描きおろしていただいたデザインで、中村さんに選んでいただいた12色が収められているセットなんです。「ゴールドライト」など、普段セットには使われていないような色も入っています。

女性のボディがアクリルガッシュになっているんですね。ひとつひとつ洒落が効いていて、ずっと見ていられそうなデザインです。それにしても細かい…。
亀井さん
細部にまで意味があっておもしろいですよね。中村さんも、普段からアクリルガッシュを使ってくださってるクリエイターさんのおひとりなんです。

 
人気イラストレーターも愛用するアクリルガッシュ。1982年の登場以来、37年間も愛され続けているターナー色彩を代表する商品です。

学生時代に出会う画材

わたしが、ターナーの「アクリルガッシュ」と出会ったのは中学校の美術の授業でした。おそらく、日本中のたくさんの学校で使われていますよね?
亀井さん
そうですね。おかげさまで、高等学校の美術の授業では全国の半数以上の学校にターナーの画材を使っていただいています。中学校でも同様ですので、「学生時代は、ずっとターナーの画材を使っていた」という学生さんも多いかもしれません。

非常に高い使用率ですね。なにか理由があるんでしょうか?
亀井さん
美術の授業で使う教材は、先生が指定されるものなので「授業に適しているもの」「使いやすいもの」として選んでいただいているのだと思います。品質としては、色の鮮やかさや乾きの早さなどを褒めていただくことがありますし、美術大学を受験する学生さんはターナーのアクリルガッシュを使われることが非常に多いんですよ。「受験でも使えるものを」と高等学校でのシェアが伸びて、「高校でも使えるものを」という考え方で中学校でもお選びいただく、という流れがあるようですね。

次のステップに備えるために、順にシェアが伸びていっている、というのはとてもおもしろいですね。当然、受験の際に使ったターナーの画材を、美大でもそのまま使用される学生さんは自然と多くなりますよね?
亀井さん
そうですね。そのまま愛用してくださる美大生の方々もとても多いですし、卒業されても、中村佑介さんをはじめ、美術家の天明屋尚(てんみょうや ひさし)さんや、画家の齋藤芽生(さいとう めお)さんといった、アーティストの方々も永く使っていただいていることを知ると、やはりとても光栄ですね。

「色」は、どうやってつくるもの?

発売が開始された1982年から、なにか変わったことはありますか?
亀井さん
もちろん品質の改良やセットの拡充など、さまざまな変化がありましたが、新色の開発がいちばんわかりやすいかもしれませんね。現在では220色以上をご用意しています。

220…想像以上の種類数で、驚きました。そもそも素朴な疑問なのですが、いわゆる「基本色」と呼ばれるような「12色セット」「18色セット」といったセットがありますよね?その中身は、それだけの種類の中からどうやって選ばれているものなんでしょうか?
亀井さん
色の三属性によって色彩を表す「マンセルの色相環」というものがあるんですが、ご存知でしょうか?基本的にはそれに従って選んでいるんです。

「マンセルの色相環」

 
 

この円の図は見たことがありました、なるほど、このような明確な基準をもって選ばれているから、混ぜ合わせてたくさんの色を表現することができるんですね。

わたしたちは、パレットの上ですこしずつ混ぜて調整しながら、手持ちには無い色味をつくっていくものですが、ターナーさんはが行う「色の開発」は、どのようなものなのでしょうか?
亀井さん
大阪の本社に「研究開発室」がありまして、そこで生み出しています。JIS(日本工業規格)に則った開発もありますし、「まったく新しい色」を生み出すこともあります。

「まったく新しい色」。
亀井さん
たとえば、おもしろい例ですと、みなさんもご存知のアニメ『エヴァンゲリオン』とコラボして、「アヤナミブルー」という色を開発したこともありました。これは、版権元に「綾波レイの“ブルー”をつくりたいんです」とこちらからご相談して実現した企画なんです。

©khara
「綾波レイ」のあの髪色を再現するわけですね。
亀井さん
それが、そうではないのです。実は、アニメやポスターをはじめとした綾波レイのクリエイティブに「この色」と決まったものは無いそうなんですよね。「どうしたものかなあ」と話し合っておりますと、「髪の色という特定のパーツの色ではなく、綾波レイというキャラクターそのもののイメージと合う色を提案してもらえませんか?」とって言っていただいて。

 

「まったく新しい色」を開発してご提案されたんですね。
亀井さん
その通りです。劇中の「綾波レイ」の人物像を捉えて、色を定義づけしていく作業なんです。そこで使用したのが、世界の伝統色として定義づけられている「フロスティーブルー」。これは「氷の青」という意味です。それと、もうひとつ。「ウォーターブルー」、これは「水の青」で、「フロスティーブルー」よりはやや緑っぽい鮮やかな色です。この「フロスティーブルー」と「ウォーターブルー」をちょうど50%ずつ混ぜ合わせた色をつくりました。水よりも冷たくて、氷よりは暖かい。これを「母なる海と、凍てつく氷の中間色」と表現しました。

©khara
すごい…まさにミステリアスな彼女にぴったりの色味ですね。
亀井さん
水と氷の間のような、掴みにくくて実態を捉えがたい、「綾波レイ」の存在感をそんな風に表した色として、版権元にも非常に喜んでいただくことができまして、ファンの方々にもとても好評でした。その結果、限定色ではなく「定番色」として画材店でいつでもお求めいただけるようになったんです。

 
 

はじめて伺う「色」というものづくりは、「表現したいものを定義して、掛け合わせのなかで配合して再現していく」という、化学と洗練された感性によって導かれているものでした。

「絵具の可能性を広げていく」

日ごろの研究や開発のうえで、ターナー色彩さんが大事にされていることはなんでしょうか?
亀井さん
我々の使命は「絵具の可能性を広げていく」ことだと考えています。たとえば、これまでに無かった色味や質感を表現できるようにすること、今まで塗装できなかったような素材に塗装をほどこせるようにすること、すぐ剥がれてしまっていたものの耐久を良くすること。そういったことを叶えるために、研究や開発を続けています。

 

まさに、ターナー色彩さんだからこそ担うことができる使命ですね。クリエイターを支えるのはもちろん、社会的な貢献もありそうです。
亀井さん
そうですね。たとえば、エスカレーターの持ち手部分のゴム。あれは、当然みなさんが手で持ちますし、機械の中で常に擦れていて、状況としてとても過酷なんですよ。しかもゴム素材で塗料が定着しにくい。ところが、傷がついたり、剥げてしまったからと言って、「ゴムごとすべて交換する」となると非常にコストがかかるものです。そこで開発したのが、業務用の「ラバーペイント」。ゴムにもしっかりと定着する塗装で、特許も取得しました。無駄な廃棄を減らすことにもつながっています。

壁画を担当したアートトイレは今年2月で9ヶ所目が完成するそう。
亀井さん
そのほか、子どもや女性も安心して利用できるような明るいデザインを、という想いを込めて、公衆トイレにアートをほどこす「アートトイレ」という取り組みなど、ターナー色彩の塗料は、工業や地域などの場面でもさまざまなかたちで活用いただいていますね。

 

永年愛される「定番商品」を提供し続け確実にシェアを伸ばしていく一方で、新商品や新たなプロジェクトの展開で「絵具の可能性を広げていく」。ターナー色彩は、その両軸で「色」に挑み続けています。

追随していく力を持つこと

「アクリルガッシュ」にも、今後新たな展開はありますか?
亀井さん
そうですね。パッケージのコラボや、新たな色やセットの開発は続けていくと思います。これだけたくさんの方に永くご愛用いただいている商品なので、ターナー色彩としてもとても大切なプロダクトですね。

クリエイターさんの表現の可能性を広げ続ける挑戦ですね。「アクリルガッシュ」の最大の魅力はなんでしょう?
亀井さん
使い方が簡単で誰でも使いはじめられるのに、さらに高い完成度を目指していくにあたっても、物足りなさがない。そこに追随していく力が、「アクリルガッシュ」の最大の魅力だと思っています。

亀井さん
基本的には絵画を制作するための画材ですが、いろんな素材に定着することができる絵具なんです。木やプラスチック、発泡スチロールにも着色することができます。多用途に使える絵具ですので、クラフトやホビー、DIYやアクセサリーづくりにも。たくさんのクリエイターの方に手に取っていただきたいですね。幅広い「ものづくり」を支える存在でありたいと思います。
今月のプレゼント
アクリルガッシュ 12色 (中村佑介セット) AG12C 11ml
さらに「ミルクペイントmini」を1本お付けして、抽選で10名様にプレゼントします。記事の感想を書いて、ぜひご応募ください。

    ・応募締め切り 2019年2月28日
    ・当選は発送をもって代えさせていただきます
    ・ミルクペイントの色は選べません、あらかじめご了承ください

応募する

取材・文 / 中前 結花  撮影 / 真田 英幸