素敵な器でいただきます。vol.5「代々木上原のビストロ、AELU」

食事をするとき、その器が素敵だとおいしさも倍増するような…とってもしあわせな気持ちになりませんか。目でみてたのしめる、味わってたのしめる、そんな豊かな「いただきます」の時間を堪能できるお店をご紹介します。第5回目は、代々木上原にあるフレンチビストロと器ギャラリーの複合ショップ「AELU」にお邪魔してきました。

まずはギャラリーを堪能

代々木上原駅、西口を出て徒歩30秒。緑が生い茂るテラスが目印の、雰囲気ある建物が今回の目的地。フレンチビストロと器ギャラリーの複合ショップ「AELU」です。

扉を開けると、小さなギャラリースペースが。AELUではレストランでも作家さんの器を使用しており実際に体験できる、という特徴があるんです。

「ギャラリーとレストランの入り口がひとつ、というのはおもしろいですよね」と話してくださったのは、ギャラリー担当の武田真亜沙さん。「お食事をされる前に、ここで器を眺める時間をつくって、『これからこういう器でお食事をいただくんだな』と気分を高められる方もいますし、実際にお食事で器を使ってみて、気に入られて帰りがけにお選びになる方もいます。もちろん、ギャラリーのみ、レストランのみおたのしみいただくことも可能です」。

こちらにはおよそ40名ほどの作家さんの作品が展示されているそう。「展示の際には異なる作家さんの作品を組み合わせ、よりさまざまな作品に触れていただけるようにしています。“素敵な組み合わせ”を提案させていただく気持ちでご紹介しているんですよ」。

見応えたっぷりのギャラリーの先に、悠々と広がっているのがレストランスペースです。

AELU=和える=逢える

ギャラリーからレストランへ足を踏み入れると、より一層スタイリッシュなムードに。器とお料理はもちろん、音楽、インテリアなど空間のあらゆるものにこだわりを感じます。

お店について語ってくださったのはディレクターをつとめる真子拓也さん。「お料理はもちろん、音楽、インテリアにもこだわりを持つオーナーシェフ丸山智博やスタッフが、出逢ってきた人や物事を感性で組み合わせているお店がAELUなんです」。

丸山さんと言えば、代々木上原のフレンチビストロ【メゾン サンカントサンク】をはじめ、数々の人気飲食店を手がけるオーナーシェフ。そんな丸山さんの長年の想いを乗せてオープンした【AELU】は今年の3月で3年目を迎えました。店名には、“和える”と“逢える”、2つの意味が込められています。

ここで、AELUで出会える器をいくつか見せていただくことに。

国内外の器をセレクトされている真子さんの器選びのポイントは「心が動いたもの」そして「想いが合う人のもの」。「『これだ』と思ったら、作家さんと直接お話をして、作品の特徴や想いなどをおうかがいします。自然と気持ちの通った作品を選んでいますね」。

綺麗なブルーブラウンの器は“ムシメガネブックス”という作陶名で制作されている、姫路の熊淵未紗さんの作品。「作家さんによると『この器はどういう人が使うんだろう』『どういうお料理が乗るんだろう』と想像することで自然と手が動くそうです。『欲しいと思ってくださる方の代わりの手をやっている』とお話されていたのが印象的でした」。

一見、普通のフラットプレートでも、あえて真ん中をへこませることで、お料理を乗せたときに、ソースなどが外に流れないようになっていたり、サービスを提供する側がお皿を運ぶときに持ち運びやすいよう、器の縁がすこし斜めになっていたり。サイン部分にも釉薬が入っているなど、手仕事ならではの細やかな技が光っていました。

可愛らしいお花が添えられた器は、信楽で作陶する大谷桃子さんの作品。シンプルな器は旦那さんの大谷哲也さんの作品です。「おふたりはキッチンという場所、そしてお料理をとても大切にされていて、よく一緒にごはんをつくられているそうです。おいしいものを食べたい、という想いからパン作りや珈琲の焙煎までご自宅でされているそうですよ。桃子さんの器に描かれているお花は食事をより豊かに演出してくれます」。

お料理を盛り付けたときに、お花が添えられた画になるなんて、なんて素敵なアイデアなのでしょう。想像するだけで、わくわくしてしまいますね。

——実際に、お料理が乗っているところを見てみたい!
このへんで、お食事をいただくことにしましょう。

小粋な気分で「いただきます」

この日、店内に流れていたのはマネージャー・八巻隆司さんセレクトのGary U.S. Bonds(ゲイリー・U.S.・ボンズ)の楽曲。ビストロ気分を盛り上げてくれる、陽気で心地よいジャズでした。

「ここに肉を焼いている音やグラスの音、人の会話や笑い声が混ざると最高なんです。普段はお客さんの入りや時間帯に合わせて音楽もセレクトしています」。

ご機嫌な気持ちで、メニュー表を眺めていると、「AELUのメニューラインナップは毎日すこしずつ変わるんですよ」とシェフの松浦真吾さん。その理由はシェフ自らが最旬の食材を選び、ひと手間加えて提供しているからなのだとか。「食材は市場に直接足を運び、自分の目で見て、手にとって、選んでいます。今の時期は山菜や筍がおすすめです」。

今回は、そんな旬の食材を使った2品をオーダー。そして、ビストロということでご自慢のワインもいただくことにしました。AELUには自然派ワイン「ヴァン・ナチュール」が種類豊富に揃っています。知る人ぞ知るレアな銘柄も。

ワインセレクターが、お料理に、または気分に合わせた、おいしいワインを提案してくれるのもAELUの嬉しいポイントです。

まず運ばれてきたのは前菜「ブラータチーズ、苺とラズベリーの酵素シロップ」です。
器は先ほどご紹介した大谷桃子さんの作品。食材の色味とお皿の美しさ、お互いの魅力が引き立っています。

自家製の酵素シロップを使用したソースの甘みと酸味がチーズのさっぱりとしたコクにマッチ。チーズとフルーツ、素材同士の組み合わせをシンプルにたのしむことができました。ワインはフランスのワイン生産者、La Sorga、Antony(ラ・ソルガ、アントニー)さんのもの。爽やかなフルーツを感じさせるすっきりとした味わいでした。

メインはこちら「新潟県産 もち豚のロティ フキノトウのソース」です。
甘みのある豚肉にとろみのあるフキノトウのソースが絶品。フキノトウのフリット、若竹のボイル焼き、と付け合わせでも存分に春を感じられる贅沢な一品でした。存在感あふれる器は、コペンハーゲンの作家・Gurli Elbaekgaard(グーリ・エルベックゴー)さんの作品。ワインはボジョレー地区のガメイという品種のもの。スパイシーでうっとりする味わいでした。

お料理に合わせてお皿の雰囲気もガラリと変わるのが新鮮でおもしろかったです。ちなみにAELUを存分にたのしみたいという方には、前菜、メイン、デザートまでたのしめる6品のコース「シェフのおまかせ」がおすすめ。

気軽に、上質なひとときを

AELUは「カジュアルにいいものをたのしめるお店」。「“いいもの”を知っている大人がちょっといい時間を過ごしたい、と思ったときにパッと思い浮かぶお店でありたいですね。お料理も器も、ここで出会えるものたちはすべて、手放しでおすすめできるものばかりです」と真子さん。「月1ペースで作家さんの個展や企画展も開催しているので、ふらりと寄っていただけるとうれしいです」。

4月は12日(金)~30日(火)までの期間、さきほどメイン料理で使用した器を手掛けられた作家さん、Gurli Elbaekgaard(グーリ・エルベックゴー)さんの展示が開催されます。

「デンマークとノルウェーで陶芸を学び、ノルウェーのフィヨルドの自然からインスピレーションを受けて作品をつくられているそうです。パッと見たときの石ような独特の質感などが印象的かと思います。かたち自体はモダンだけれど、表情はフィヨルドの岩や短い草で成り立った山、苔生した石ころなど、北欧の自然を連想させるような雰囲気をまとっているところがおもしろいんです」。

お料理、器、音楽、空間、そしてスタッフたち。すべてにおいてこだわりがたっぷり、でも気さくにあたたかく受け入れてくれる、そんな素敵なお店でした。広々としたテラス席もあるので、これからの時期は夜風を感じながらたのしむのもよさそうです。月替わりの展示や企画展も要チェック。ぜひ足を運んでみてください。

次回はどんな素敵な器とごちそうに出会えるのでしょうか。
乞うご期待。

AELU
住所:渋谷区西原3-12-14 西原ビル1F
営業時間:ギャラリー11:00~19:00 レストラン18:00~25:00
定休日:無休(ギャラリー)、日曜日(レストラン)
公式サイト:http://www.aelu.jp/

取材・文 / 西巻香織   撮影 / 真田英幸

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