今週のものづくりの言葉「だって、ものづくりってたのしいじゃないですか」

ものづくりの現場にお邪魔し、日々たくさんのお話をうかがう中で、わたしたちは、いくつもの「はっとするような言葉」と出会ってきました。それをすこしでも多くのみなさんに届けたい、という想いからはじめる連載です。ものづくりに携わる人にも、そうでない人にも。ひたむきな「作り手の言葉」は、なにかのヒントになったり、ときにはおまじないになったりするかもしれません。

今週の言葉

型紙やつくり方は、どんどんお客さんに公開してもいいかなって。(中略)みなさんにもつくってたのしんでいただいて、ぼくはより丁寧に新たないいものをつくっていく。みんなでたのしみたいですね。だって、ものづくりってたのしいじゃないですか。

イラスト:絵と図 デザイン吉田

2018年9月、アニマルトロフィーデザイナーとして活躍されているHande und Stitchの花村さんのアトリエに、お邪魔しました。
 
新幹線に揺られ訪れたのは、ものづくりの地としても知られる「岐阜県」。
前年2017年の「minneハンドメイド大賞2017(現・minneハンドメイドアワード)」でグランプリを受賞された「アニマルトロフィー」の制作現場を実際に見せていただくことになったのです。

minneハンドメイド大賞2017 グランプリ受賞作品:『アニマルトロフィー』と暮らそう!

出版や企業とのお取り組みなど、特にお忙しくされている時期でしたが、花村さんはとてもたのしそう。中でも、アニマルトロフィーの「つくり方」が丁寧に紹介された本『フェルトでつくる アニマルトロフィー』(誠文堂新光社)の発売をとてもたのしみにされていて、「アニマルトロフィーの型紙を掲載するこれ(この本)をベースに、いろいろ挑戦したいと思ってるので、待ち遠しいです」と語ってくれました。
 
花村さんは、アニマルトロフィーの制作を体験することができる「ワークショップ」の実施もライフワークとされています。
はじめて開催されたとき、「“お客さんの手によって魂が込められていく”、“それをお手伝いする”、ということがこんなにおもしろいものか…」と感動されたと言うのでした。
 
作り手にも、いくつかの種類があるように思います。
アイデアとしてひらめいた手法や、鍛錬して手に入れた技術を「自分だけのもの」として大切にされている方もいらっしゃる一方で、花村さんのように「つくり方を紹介したい」「技術を共有したい」と考える方もいます。
 
なんでも独り占めしたい、というタチのわたしは後者の考え方について、とても不思議な気持ちになったりもしました。
 
ものづくりのレシピは、「ただの手順」ではありません。取り組むにあたっての「ちょっとしたコツ」はもちろん、その多くは試行錯誤によって「これだ!」と思えるものにたどり着いたからこそ示せる、一歩一歩自分の足で歩いて完成させた「書き込みの多い地図」のようなものだと思います。
苦労してつくりあげ、手にした大切な地図を、誰かに渡す気持ちはどんなものでしょう?

花村さんは言います。
 
「型紙やつくり方は、どんどんお客さんに公開してもいいかなって。そうすると、自分はさらに新しいものをつくらないといけなくなりますし、新しい創作にもつながるんじゃないかなと思うんです。みなさんにもつくってたのしんでいただいて、ぼくはより丁寧に新たないいものをつくっていく。みんなでたのしみたいですね。だって、ものづくりってたのしいじゃないですか」
 
花村さんが考えるご自身の使命は、「新たなものづくりに取り組み続けること」。
ひとつしかないゴールへの地図を守り続けることよりも、新たな目的地をさがし続けることに重きを置いて、「共有する」「みんなでたのしむ」ことを選ばれました。
それは、「ものづくりはたのしい」を多くの人と一緒に味わうためです。
 
それぞれの「ものづくりへの向き合い方」に触れ、「つくる」には、わたしが思うよりずっと、たくさんの種類の深い喜びが用意されていることにいつも気づかされます。
 
作り手の数だけ「信念」があり、その「信念」はどれも、とても尊いものだと感じています。

 

<紹介した取材記事>
2018年9月の記事:
Hande und Stitchさん「アニマルトロフィーとの出会いと挑戦」

アニマルトロフィーデザイナーとして活躍されているHande und Stitchの花村さん。作品の誕生と現在のご活躍までには、花村さんにとって「ものづくり」を追求し続け、出会いを重ねる“旅”のような時間がありました。
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来週の言葉もおたのしみに。
 
文 / 中前結花  イラスト / 絵と図 デザイン吉田
今週の作り手 / Hande und Stitch(花村)