「あの作品」ヒストリー vol.3 長谷部真美子さんの、イラストドール

自身の代名詞ともいえるような、長年愛され続けている作品をもつ作家さんに、その作品の誕生秘話を語っていただく連載企画。第3回目は、イラストレーター・長谷部真美子さんと、カラフルな衣装をまとったお人形「イラストドール」の登場です。

長谷部真美子
オーブン粘土によるイラストレーションを手がける、粘土クリエイター&イラストレーター。minneでは「イラストドール」と名付けた布人形を制作。
https://minne.com/@hasebemamiko

長谷部真美子さんのギャラリーに並ぶのは、色とりどりのペイントで描かれた、華やかな衣装を身にまとったお人形「イラストドール」です。どれも手描きならではの1点もので、新作を心待ちにするファンがたくさんいます。コレクションとして集める人も多数いらっしゃるんだとか。

今回は、そんな長谷部真美子さんの「イラストドール」ヒストリーに迫りました。

苦肉の策

「イラストドール」が生まれたきっかけをおしえてください。
長谷部真美子
普段、粘土でつくる立体イラストレーションを手掛けていることから、minneでも最初は粘土を使用したアクセサリーを販売していました。ところが、限りある制作時間の中で、納得のいく個数がつくれないことや、アクセサリーへの興味の薄れに気づき、いつからか方向転換を考えるようになったんです。

長谷部真美子
わたしの興味はどこにあるのだっけ…?考えた末に浮かんだのは「人形づくり」でした。昔からずっとつくってみたかったんです。それからは、ボディをつくり、お洋服を着せて…と試行錯誤を重ねる日々。でもなかなかうまくはいきませんでした。挫折しかけたとき、「いっそボディに顔も洋服も描いてしまえ!」と開き直りで生まれたのが「イラストドール」です。

白、またはキナリの布を手縫いし、綿を入れて人形の形を作成。その布の上に直接アクリル絵の具で着色します。
長谷部真美子
お裁縫できちんと人形のボディをつくること、サイズを合わせたお洋服をつくること。それはわたしにはできない。できないことは諦める、できることの範囲内でやる、と考えた末の苦肉の策でした。ですが、その結果、イラストと人形の中間の、ちょっと不思議な作品ができ上がりました。

ヘンテコを潜ませる

minneでご活動される中で、印象的な出来事はありますか。
長谷部真美子
「minne’sセレクト」に選んでいただき、たくさんの方に「イラストドール」を知っていただけたことです。その際、一度に8体もご購入くださった方がいたんです。すっかり慌ててしまって、一体入れ忘れるという大失態をしてしまいました。感謝しかなかったですね。

一度に8体はすごいですね。でも集めたくなる気持ちはよくわかります。デザインなどにおいて、人を惹きつけるためにこだわっているところはありますか。

長谷部真美子
かわいい中にも、ちょっと不思議な世界観や、ヘンテコな部分を潜ませています。わたし自身、もともとシュルレアリスムの絵が好きで、一筋縄ではいかないアイデアに惹かれるんです。人形の裏布も、なるべくテーマに合ったものを選ぶようにしていますので、そこもたのしんでいただけたらうれしいです。

「つくる」たのしみ

「イラストドール」はご自身にとって、どのような存在ですか。
長谷部真美子
自分の好きな世界観を表現できるもの、でしょうか。20年くらい粘土作品づくりがメインだったので、自分の中では「イラストドール」はまだまだ新参者。今後長い付き合いになるのか、すぐ終わってしまうのか…それはわかりませんが、今はつくっていてとてもたのしいですね。

20㎝弱の女の子のお人形をメインに、子どもにもぴったりの小さなお人形や、ブローチ、チャームも展開。

今後つくってみたいものや、目指していることはありますか。

長谷部真美子
「つくること」それ自体が目的なので、先のことはあまり考えていません。そのときに浮かんだアイデアを、ひたすら形にしていきたいと思っています。自分のたのしみのためだけにやっていることが、いつの間にか誰かのたのしみにもなっていたらいいなぁ、という理想はあります。つくっていくうちに、つくりたいものが変わり、また突然、全然違うものをつくり始めるかもしれませんが、つくり続けること自体は変わらないと思っています。

 

たのしみながらつくられている、そのワクワク感がまさに伝わってくるような、眺めているだけでどこか晴れやかな気持ちにしてくれる「イラストドール」たち。1体1体が持つ異なる特徴が世界観たっぷりに表現された、ギャラリーページもとっても素敵なので、ぜひご覧ください。

ギャラリーから一例ご紹介。左から順に「雪」、「キャベツ」、「黒猫Fashion」と名付けられたイラストドールです。

次回の作品ヒストリーもおたのしみに。

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取材・文 / 西巻香織