「あの作品」ヒストリー vol.7 Troomsさんの、革のワッフルケース

自身の代名詞ともいえるような、長年愛され続けている作品をもつ作家さんに、その作品の誕生秘話を語っていただく連載企画。第7回目は、Trooms(ティールームス)さんと「革のワッフルケース」の登場です。

Trooms
革雑貨を手がけるデザイナー。「お茶とお菓子で、優雅な時間を味わうお茶会」「友達や家族との会話をたのしみ、リラックスできる時間」、そんな甘くたのしいひとときを表現。
https://minne.com/@trooms

 

Troomsさんの作品ギャラリーページを覗くと、甘い香りがただよってきそうな作品がずらり。実はスイーツではなく、どれも革で制作されたもの。中でも注目を集めるきっかけとなったのが、リアルな凹凸と深い色味が目を惹く革のワッフルコインケースです。自分用に、ギフト用に、と幅広い世代から大人気。

今回は、そんなTroomsさんの「革のワッフルケース」ヒストリーに迫りました。

アイデアは裏側に

「革のワッフルケース」が生まれたきっかけをおしえてください。
Trooms
今から10年ほど前、グラフィックデザイナーとして、墨田区の皮革工場のプロモーションツール制作をお手伝いしていたときのこと。ある工場が薬品で革を縮める加工を始めたんです。

Trooms
工場に足を運ぶたび、そこで働くみなさんに「革」の魅力を教えていただいていたわたしは、その収縮加工を目の当たりにして、何か新しい革雑貨に活かせないかと考えるようになりました。当時は革小物というと、ナチュラルで男性的な商品が多かったので、女性でも持ちたくなるような雑貨は制作できないかなとずっと思っていて。

実際にその工場で生み出される収縮革には、特有の凹凸、やわらかな手触り、あたたかみ、模様の微妙な異なりがありました。それらを活かして、なんとか女性にも好まれやすいユニークな作品をつくりたいと思い試作を続けているうちに、通常は表として見せない「起毛した裏面」を使うことを思いついたんです。

染色や凹凸のバランスなどを調整し、革のワッフルの原型ができあがりました。

職人の手仕事

この独特の質感は裏側だったんですね。
Trooms
はい。ただ、このワッフルの縫製は、凸凹が大きすぎてミシンの針が浮いたり落ちたりするため、とても縫いづらくて。次に、縫製できる職人さん探しが始まりました。何度も「無理だ」と言われながら、それでもなんとか頼み込み、やっとの思いで革製品として完成したんです。

「美味しそうなワッフルを表現するために、伸縮や素材の色、起毛状態には徹底してこだわりました」とTroomsさん。こんがりとした表面にチョコレートがたっぷりかかったような贅沢なビジュアルに。

Trooms
ちなみに、最初の職人さんは80歳を越えて引退。今は3人の職人さんにさらに丸くきれいなカタチになるようつくってもらっています。ときには数時間も打ち合わせをして、一緒につくり上げることもあります。

作品を通しての出会い

「革のワッフルケース」を販売し続けてきた中で、思うことはありますか。

学生にも大人にも人気の革のワッフルペンケース。
Trooms
minneを始めてから、全国のお客さまとのつながりを強く感じるようになりました。たくさんの温かいメッセージを励みにしています。中には、これまでに21回も注文してくださったお客さまも。

他にも、「卒業記念にご友人とおそろいで」「新社会人としてのはじめての名刺入れに」と晴れの日に選んでいただいたり、チョコレートのパティシエの方にお買い求めいただけたこともあります。そんな思いがけないさまざまな出会い、ご縁をつないでくれたのがこの作品であり、minneという場なので、感謝の気持ちでいっぱいですね。

それだけ多くの方に愛され続けている作品ということですね。
Trooms
ありがたいです。ワッフルをたくさんの方にたのしんでいただいたことで、「ワッフルに続くお菓子の革小物をつくりたい」と考えるようになり、5年ほど前からは、チョコレートをテーマにした作品もつくり始めました。

エンボスの型の変更や、半光沢のある革探し、箔押しのバランスなど、こちらも試行錯誤の末のたまもの。「愛用するうちに箔が落ち、型押しの筋に金だけが残る、その経年変化もおたのしみいただけたらうれしいです」。

「革のワッフルケース、チョコレートケース」はご自身にとってどのような存在ですか。
Trooms
「大切な人に贈る手づくりお菓子」のイメージです。お誕生日やクリスマスには家族でケーキを囲み、友達に手づくりお菓子を贈ったり、バレンタインにはチョコレートを贈る。甘いものって、幸せな時間の象徴だと思うんです。わたしがつくっているワッフルやチョコレートも、お客さまの大事なひととき、大事な人との時間を豊かにできたらうれしいなと思っています。

革の魅力を発信

新作または、今後の展望をおしえてください。

Trooms
「皮革」は原材料が生きものなので、1枚ごとに大きさ、やわらかさ、シワ、傷などが異なります。季節によってもまた素材の風合いが異なるのです。それが革工場のみなさんの大変な手間によって皮革素材になっています。

この過程をずっと見続けて、伝えることをしてきたので、これからも皮革素材の魅力をかわいい雑貨を好む方たちにも伝えられるような素敵な革小物をつくっていきたいです。

そのひとつとして、わたしが好きな甘いもの、おいしいものを、上質な革小物で表現し続けていきたいと考えています。お客さまから要望が多いアイテムや、新商品も準備しているのですが、わたしの商品は、開発期間が長くかかってしまい、また途中で廃案になるものも多く、お客さまをお待たせしてしまっている状況です。どうかじっくり長くお付き合いいただけるとうれしいです。

革製品のもつ、クールでメンズライクなイメージとはひと味違う、新しい魅力が詰め込まれたTroomsさんのお菓子シリーズ。見た目のかわいらしさはもとより、使ううちに馴染む質感、経年変化など、これからもたくさんの人にその魅力は広がっていくに違いありません。珍しいパステルカラーのチョコレート雑貨など、ワッフルモチーフ以外の作品も要チェックです。新作もたのしみにしつつ、ぜひギャラリーをチェックしてみてくださいね。

次回の作品ヒストリーもおたのしみに。

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取材・文 / 西巻香織