「あの作品」ヒストリー vol.18 PANJAさんの、まるごと半熟煮卵パン

自身の代名詞ともいえるような、長年愛され続けている作品をもつ作家さんに、その作品の誕生秘話を語っていただく連載企画。第18回目は、PANJAさんと「まるごと半熟煮卵パン」の登場です。

PANJA
無添加、自家製天然酵母のパン工房。埼玉に構える店舗ではカフェも併設。
https://minne.com/@go-panja

定番のものから旬の素材を使ったユニークな創作まで、バリエーション豊かなパンをつくり続けているPANJAさん。この時期は毎年「シュトーレン」も注目を集めますが、長年ロングセラーとなっているのが「まるごと半熟煮卵パン」です。その名の通り、半熟の煮卵がまるごとひとつ入った、大胆かつ食べ応えのあるパンは、幅広い世代に大人気。

今回は、そんなPANJAさんの、「まるごと半熟煮卵パン」ヒストリーに迫りました。

「煮卵」といえば

PANJAさんのギャラリーページの中でも、こんがりと美しいパンの焼き色と、深い黄身の色のコントラストがグッと目を惹く「まるごと半熟煮卵パン」ですが、誕生のきっかけをおしえていただけますか。
PANJA
単純に、ラーメンが好きだったからなんです(笑)。特に、“半熟”の煮卵が大好きで。どうにかパンでアレンジできないものかと思い、開発にチャレンジしたことがきっかけです。

 

着想はラーメンからきていたんですね!でも、半熟の煮卵をまるまるひとつパンで包むというのは…なかなかご苦労があったのではないでしょうか。

PANJA
そうなんです。実は、煮卵パンは8年前に開発をしていて、これまでに、初代、2代目、3代目とリニューアルを遂げてきました。
初代は今よりもすこしハードな生地で、煮卵も半熟ではなかったんですよ。

 

しっかりと火が通っていた?
PANJA
はい。卵自体をどんなに半熟でつくっても、パン生地で包んで焼くことでどうしてもさらに火が通ってしまって…。初代は、たとえ火が通ってしまったとしても、とにかくおいしい“煮卵の味付け”に徹底してこだわり抜きました。

自家製鰹出汁のレシピや、卵を漬け込む時間など、“理想のおいしさ”を追求して、日々試行錯誤されたのだそう。

真打ちは3代目

 

2代目、3代目についてもぜひおうかがいしたいです。
PANJA
7年前に開発した2代目は、煮卵の味とパン生地とのマッチングにこだわり、ハード系の生地からしっとりとしたブリオッシュ生地に変更しました。甘みがあり、口溶けの良い生地と、煮卵の味わいとの相乗効果を目指したんです。

 

「甘さ」と「しょっぱさ」は相性抜群ですよね。十分人気が出そうですが、そこにさらにまた改良が加わるんですね。
PANJA
やはり、どうしても煮卵を“半熟”で提供したいという想いがあって。…でも何度試作をしてもうまく出来ない。どんな包み方をしても、焼き加減を変えても、自分の理想の半熟にはなりませんでした。

PANJA
ところがある日、カレーパンを揚げているときに、ふと気付いたんです。「揚げればずっと短い時間の加熱で済む」ということに!
もしかすると、一般的にはすぐに思いつくことなのかもしれません。自分の場合は、この発見までに何年もかかってしまいました。そしてすぐさま2代目を改良することに。

 

いよいよ3代目の登場ですね。煮卵が“半熟”に!

PANJA
はい、満を持してのリニューアルでした。そこからはおいしい“半熟の煮卵”をつくるべく、今度は“半熟”に最適な味付けの試行錯誤を続け、リッチな自家製のブリオッシュ生地で包み、自家製のパン粉をまとい揚げる、現在の「半熟煮卵パン」が完成しました。

PANJAのブリオッシュ生地は、時間が経ってもパン生地の風味が落ちないのが特徴。揚げ油にもこだわり、最高級のオイルを使用することで、油っぽさがないのも人気のひとつ。

「まるごと半熟煮卵パン」は、試行錯誤の賜物ですね。
PANJA
理想を実現するためには、あきらめないことだと、実感させてくれた商品ですね。よくある言葉ですが、あきらめたらそこで終わってしまうんだな、としみじみと思います。

 

納得のいく3代目に辿り着くまでに、印象的だったことはありますか。

PANJA
試作段階の話ですが、揚げタイプの現在の煮卵パンをフライヤーで揚げて、スタッフで試食をした際に、ひと口食べたパンから、半熟の黄身がトロッと流れ出たときの感動は、今でも忘れられませんね。

オリジナル性

 

「まるごと半熟煮卵パン」は、想いも思い出もたくさん詰まった一品なんですね。
PANJAさんは、実店舗も構えられ、他にもさまざまな種類のパンをつくられていますが、開発するうえでの“こだわり”をおしえていただけますか。

埼玉県入間市に「石窯パン工房PANJA」として店舗を構えるPANJAさん。
PANJA
そうですね、新しいパンを開発するときは、常に「PANJAオリジナルと言えるか」を自問自答しています。

店内には、食パンをはじめ、デザート系のパンからお惣菜系のパンまで、100種類以上の焼きたてパンがずらり。
PANJA
「よそのパン屋さんで買えるものはつくらない!」が合言葉です。が、もちろん普通のアンパンもつくっています。でも味わいは似て非なるものだと思っています。あるものは大胆に、あるものはさりげなく、すべてにPANJAオリジナルの風味を取り入れています。

店舗には広々とした開放感のあるカフェスペースを併設。

その場で購入したパンをドリンクといっしょにたのしむ人もたくさん。

 

たしかに、PANJAさんのパンは素材や組み合わせにも、ひと味ちがうこだわりや遊び心のようなものを感じます。今後の新作もたのしみにしていますね。最後に、この時期いち押しのパンとこれからパン屋さんとして目指すところをおしえていただけますか。

PANJA
今期のイチオシは「メープルと栗のシュトーレン」です。今年は、3年ぶりのリニューアルで、メープルシロップを練り込み、よりコクと奥深さが増したと思いますので、ぜひお試しいただけたらうれしいです。

そして、これからもモットーはお客さまを愛し、スタッフを愛し、自分も愛すること。「愛」のあふれるパン屋でいたいですね。スタッフ一同、「おいしい」を追求し続け、品質向上に日々つとめていきたいと思います!


納得のいく形にするまで、徹底して理想を追求し続け、改良を重ね誕生した、ロングセラー商品「まるごと半熟煮卵パン」。こだわり抜かれた味付けの煮卵とPANJAオリジナルのブリオッシュ生地とのハーモニーをぜひ堪能してみてください。
毎年完売必至のシュトーレンもお見逃しなく。PANJAさんのギャラリーページ、要チェックです。

次回の作品ヒストリーもおたのしみに。

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取材・文 / 西巻香織