素敵な器でいただきます。vol.14「三軒茶屋のタコス専門店、Los Tacos Azules」

食事をするとき、その器が素敵だとおいしさも倍増するような…とってもしあわせな気持ちになりませんか。目でみてたのしめる、味わってたのしめる、そんな豊かな「いただきます」の時間を堪能できるお店をご紹介します。第14回目は、三軒茶屋にあるタコス専門店「Los Tacos Azules」にお邪魔してきました。

大きなサボテンがお出迎え

三軒茶屋駅から徒歩10分。背くらべをしているかのように、にょきっとそびえ立つ大きなサボテンが目印。こちらが今回の目的地、タコス専門店「Los Tacos Azules(ロスタコスアスーレス)」です。

もともとメキシコでタコス屋さんを営んでいたという店主のマルコ・ガルシアさん。
日本への留学をきっかけに、日本の食文化の豊かさや素材の味を活かすアプローチなど、食への強いこだわりに感銘を受け、「日本で究極のタコスをつくる」という夢を持って改めて来日し、お店をオープンしました。

伝統製法でつくるトルティーヤは、メキシコの在来種である「ブルーコーン」を使った、目を惹く青い生地が特徴で、店名の「Los Tacos Azules」は「青いタコス」という意味を持つのだそう。

こだわりの詰まった「手仕事」

店内は外観と同じ、白とブルーの配色が印象的。木製のテーブルセットや植物などのインテリア、あたたかみのある電飾で、どこかほっとする隠れ家カフェ的な空間になっていました。

内装のこだわりは、お料理同様「ひとの手でつくる、ならではの味」なのだといいます。
家具のセレクション全般を手がけたのは、マルコさんがメキシコのワークショップで知り合ったという日本の建築家であり造形作家の岩村寛人さん。
岩村さんの作品も店内のあちらこちらで目にすることができます。

ひとつひとつのランプも、岩村さんの手作り作品。シンプルで個性もあるユニークなデザインです。

「暖簾(のれん)も彼のアートです。このお店のトルティーヤの原料である、ブルーコーンをモチーフにしているんですよ」とマルコさん。お店への愛と遊びゴコロを感じる作品ですね。

メニューボードの一部は、経年変化をたのしめるレザー仕様に。これもまたひとつひとつ手で付け加えた、さり気ないこだわりのひとつ。

「派手ではないけれど、ささいなところにひとの手でひと手間加えることで、このお店だけのオリジナル感をたのしめる。料理も内装も、ぼくのお店ではそういうところを大切にしています」とマルコさん。

この想いは器選びにも通じていました。

素朴であたたかい「器」

Los Tacos Azulesでメインに使用している器はどれも、陶芸家・矢尾板克則さんのもの。お店をオープンする前にとある展示で矢尾板さんのオブジェを見かけ、ひと目惚れされたのだそう。
「これはうちのトルティーヤと相性抜群に違いない、とすぐさまオリジナルの器制作を依頼したんですよ」。語ってくださったのは、マルコさんのパートナー阿部莉香さん。

長年使っているかのような表面の風合いと、見た目にやさしいカラフルさ。この伝統とモダンが同居するような作風が、メキシコの民家の雰囲気にも重なるのだといいます。

よく見ると、お皿の縁などに、「Los Tacos Azules」のロゴが。矢尾板さんがこっそり入れてくださり、ある日お店に来たお客さまが発見されたのだそうです。

このお皿の絵柄には、トルティーヤの製造工程、このお店の特徴が表現されているような…?物語を想像させる不思議な魅力がありました。

「器選びはとても大事だと思っています。お店のコンセプトや料理で表現したいもの、言葉では伝えきれない部分を届けてくれるような気がするんです」。

色味や独特な配色が目を惹く、丸みを帯びたかわいいカップ。

矢尾板さんが手がける人気のフリルシリーズも、Los Tacos Azulesオリジナル仕様に。

「トルティーヤの色味や食感と、矢尾板さんの器は本当に相性がいいんですよ!」と莉香さん。

そろそろ、メニューをオーダーしましょう。

焼き立てを「いただきます」

数あるタコスはどれも手のひらサイズ。さまざまなトッピングをして、たのしむことができます。
また、季節によって、旬の食材を使ったメニューが登場するなど、ラインナップが入れ替わることもしばしば。

今回は、自家製のチョリソーでジャガイモを炒める、メキシコのクラシック「パパ・コン・チョリソ」と、取材時のおすすめタコスをオーダーすることにしました。

キッチンスペースはオープンになっているので、カウンター席に座ると、透明のパネル越しに、マルコさんが目の前でトルティーヤを焼いてくれる、その様子もたのしむことができます。

2種のサルサソースとともに、焼き立てのタコスが運ばれてきました。このときのおすすめタコスは、アボカドにヤギのチーズと焦がし茄子のペーストを組み合わせたもの。

おどろいたことに、器とトルティーヤの表面の風合いが本当にそっくりでした。まさにこの青いタコスのためにつくられたお皿かのよう!

サルサソースをかけて、さっそくいただきます。
焼き立ての青いタコスは、ほどよくもちっとしてほのかに香ばしく、それでいて癖はなく、具材の旨みもしっかり味わうことができます。なんといっても、焼き立てのあたたかさが手や舌を通してダイレクトに伝わってきて、ほっこりとやさしい気分に。

原料の「ブルーコーン」も見せていただきました。在来種のブルーコーンをいちから製粉してつくるトルティーヤは実はメキシコでもめずらしく、一般的には大量生産でつくられた“トウモロコシ即席粉”でつくるトルティーヤがメインなのだとか。

お寿司を食べるように、タコスをパクッと食べてしまい、食欲が加速。せっかくなので、さいごにスープメニューもいただくことにしました。

かわいらしいフリルのボウルに入ったスープは、メキシコの「バルバッコア」と呼ばれる調理法で抽出された“燻製肉汁”を出汁に使った一品。燻された旨みが染み渡っていて、とってもおいしい!メキシコの田舎の味をイメージしてつくったレシピなのだそうです。
器の雰囲気とあいまって、メキシコの民家でスープをふるまわれているような気分に。

焼き立てのトルティーヤでつくるタコスも、深い味わいのスープも、あたたかくて特にこれからの寒い時期にぴったりです。お料理と運命のようにマッチした器で、おいしいひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。

次回はどんな素敵な器とごちそうに出会えるのでしょうか。
乞うご期待。

Los Tacos Azules
住所:東京都世田谷区上馬1丁目17−9
営業時間:9:00~15:00(L.0.14:30)
※時間短縮営業中です。おでかけの際はHPで営業時間をご確認ください。
定休日:月曜日・火曜日
公式サイト:https://www.lostacosazules.jp/

取材・文 / 西巻香織   撮影 / 真田英幸