夫婦で活動する彫金作家atelier kikikiさん「着飾るメガネは、ジュエリーになる」

「minneのハンドメイド大賞2016」にて、最終ノミネート作品に選ばれた「ガーリーなメガネ」をはじめ、ハンドメイドメガネ作品のほか、ジュエリー作品を制作し、ご夫婦で活動するatelier kikikiさん。制作する作品たちはどれも時が経つにつれ特別な存在になってゆくような、ぬくもりある作品ばかり。日々のものづくりのこと、大切にする思いをお聞きしました。

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ふたりではじめた、ものづくり

おふたりで作家活動をはじめることになった経緯を教えてください。

ゆきこ わたしは元々、WEBデザイナーを仕事にしていました。ただWEBの仕事だったので、だんだんとリアルなものづくりがしたいなって思うようになって。最初は趣味で5年ほど前から、彫金でつくるアクセサリーやジュエリーを制作していました。

やすひさ ぼくは最近まで、建築関係の仕事をしていました。作家一本でいこうと決めたのは実は今年に入ってからのことで。両立しながらの時期は仕事後にアトリエにきて、終電までやってという生活でした。

ゆきこ 2013年に、atelier kikikiというブランドを立ち上げてからも、しばらくはふたりでアクセサリーづくりをしていました。メガネの作品ができたのはその1年後くらいのことで、何度か試作を重ねてようやくかたちにできました。

やすひさ メガネをブランドの主軸にしていこうと考えていたそのころ、こどもが生まれたこともあって一気に日々の生活が忙しくなっちゃって。

おふたりで作家活動をするなかで、役割分担などはありますか?

ゆきこ 子供が生まれてからは、アトリエには行かず、家でできるデザインだったり作品の撮影、お客さまとのやりとりや作品の発送などをしています。

やすひさ 主にアトリエにて制作全般ですね。そのほか育児の合間に、ふたりで新作のアイディアなど話し合っています。


受け継いできた、メガネづくりのたのしさ

atelier kikikiさんの、ハンドメイドメガネはどういったきっかけで生まれたのですか?

ゆきこ ブランドを立ち上げた当時、金属とプラスチックを合わせたコンビネーションデザインのメガネが流行っていたこともあるのですが、これまで彫金でジュエリーをふたりでつくっていたということから、どうにかこの技術を活かしたメガネを制作したいなと考えるようになりました。

やすひさ 「メガネづくり」のはじまりは、ぼくの祖父まで遡ります。祖父は地元で時計と貴金属とメガネを販売するお店を営んでいました。そして父親もメガネ屋をやっていて。ただ父親のお店は、修理などをやる小売店だったんですよね。当時のぼくは、自分が継ぐイメージがわかず、メガネに携わるなんて考えていませんでした。

小売という業界では、きっと自分の好きなことはできないのだろうと思っていて、関心を持っていなかったんです。でもあるとき、メガネの生産が盛んな福井県・鯖江市でハンドメイドメガネのワークショップをやっているという記事をみつけて、面白そうだったので思い切って行ってみました。はじめて、メガネづくりに触れたのがそのときで、「へえ!」と感動した覚えがあります。大学時代に勉強したデザインと父親のメガネづくりが重なった気がしたんです。そして、見よう見まねでメガネづくりをはじめてみたんです。

やすひさ それからは、メガネの展示会などにも行くようになって…。そこでまた鯖江市で出会った方と再会をして、メガネづくりのことをお聞きしたり、メガネの生地や部品を直接売ってもらったり、たくさん良くしていただいて。家系もそうですけど、ご縁だなあと感じています。

おふたりはどんなことに興味をもって幼少期過ごしていましたか?

ゆきこ わたしの母はアクセサリーをたくさん持っていて、普段からいろいろ身につけている姿を横で見ていて、何だかワクワクしていた記憶があります。ただわたしの興味は、洋服や身につけるものへというわけではなく、デザインそのものに惹かれていたのかもしれないなって思いますね。小学校の文集に載せる、夢を書く欄には、「将来は、アクセサリーデザイナーになりたい」って書いていたほどなんです。

やすひさ ぼくは幼いころはインドアな性格で、ブロック遊びしたり空き箱を積んで遊んだり…。それと、教育方針からなのか、当時は家にテレビがなかったんですよね。だから、ものづくり、というか想像して遊ぶみたいなことが自然と身近にあったのかもしれません。学校に行けば、友だちはみんなゲームやテレビの話をしていて、当時はなんでうちだけ…って記憶のほうが強いんですけど(笑)。

でも、父親のお店にはテレビが置いてあるんですよ。テレビを観にお店に行くんですけど、そうすると自然と父の仕事姿を見るんですよね。当時は意識なかったんですけど、いまの自分の仕事を思うと父親の影響はあったんだなあと実感しますね。

ゆきこ その、家でテレビ観せないの教育方針は我が家では活かせてないね、子どもにDVD観せちゃってるもんね(笑)。


選んで楽しむ、メガネでつくる暮らし

作品づくりにおいて「自分らしい」と感じる部分や、制作の「こだわり」はありますか?

やすひさ ぼくたちは「着飾るメガネ」ということを考えて、メガネづくりをしています。こだわりの部分でいうと、コンビの部分はジュエリーをつくる技術をつかって制作しています。これは、メガネづくりの常識でいうと普通はチタンの型押しなどでつくることが一般的なのですが。

ゆきこ でも、わたしたちは色々な意見も聞きつつも、その方法にこだわって制作を続けていて。「着飾るメガネ」は、きっとジュエリーと同じなんじゃないかなって思うんです。いろんなシーンで使ってもらいたくて、アクセサリーでコーディネートを楽しむようにメガネでおしゃれをしてほしいなって思う理由から、そういった素材選びをしています。

やすひさ いま世の中に出回っているメガネは「熟練した職人がつくる完成度の高いもの」や「かわいいけどチープなもの」が多く、バランスの良いものが少ない気がします。ぼくたちがつくりたいのは「かわいいけどしっかりしたもの」。

ゆきこ 自分らしい、かはわからないのですが、元々、わたしたちはバンドがきっかけで知り合ったんですけど、バンドマンってやりたいことしかやらないんですよね(笑)。「やりたいこと」に全力で、そういった意味だと、わたしたちは「やりたい」ものづくりをしてるんだなって思います。

作家をしていてよかったことはありますか?

ゆきこ minneさんで、作家活動をしていると直接お客さまの声が聞けることがうれしいですね。メーカーのデザイナーをしていても、きっと聞こえない声はあったように思います。お客さまとのやりとりの「場」が用意されているのってありがたいなと思いました。

やすひさ 確かに。音楽活動をやっていたとき、表現したものを「伝える」ということに苦労しました…。

今後の活動目標や課題をおしえてください。

やすひさ アイディアのストックがたくさんあるので、メガネを主流にもっと作品のバリエーションを増やしていきたいなって思います。

ゆきこ 「物語性のある作品」づくりを目指したいなと考えています。例えば「女性が旅にでる」がテーマなら、このメガネを選びたいって思えるような、いろんなシーンごとにつけ変えたくなるような、特別な存在になりたい。洋服みたいに、メガネを選んで楽しんでほしいなって、そう思います。


プロフィール

atelier kikikiさん

「普段の生活の中に潜む魅力を拾い上げ形にする」がコンセプトのデザインユニット。ハンドメイドメガネの「Optiqueライン」と、真鍮とシルバーを主体とした「ジュエリーライン」がある。