bonamiさんご夫妻の”好き”が詰まった特別なお店「本の轍」

普段は、世田谷にある「minneのアトリエ」でみなさんをお待ちしている、作家活動アドバイザー・和田が、出張セミナーのために訪れた愛媛県の松山で、編み物作家bonamiさんご夫妻が営んでいるお店「本の轍」にお邪魔してお話をうかがってきました。"本と雑貨をハシゴして、ついでにコーヒーも飲める本屋さん"がコンセプトです。

夢が実現したお店

2017年11月9日、愛媛県松山市の繁華街からほど近い場所に「本の轍」はオープンしました。そこは、minneでも活動する編み物作家bonamiさんご夫妻による、「好き」が詰まった特別な場所。この空間への想いと「これから」のお話をうかがってきました。

和田 たいへんご無沙汰しております。まさか、1年でこんなに素敵な居場所ができあがるなんて予想外の展開で、とても驚いています。開店おめでとうございます。

bonamiさん ありがとうございます。去年は「お店、そろそろやろうかな?」と話しているだけで、まだなにも決まっていない段階でしたが、一気に話がすすんでこのような場ができました。

和田 棚のすみずみまで気持ちが行き届いていることがよくわかります。何時間でも眺めていたくなりますね。今日は、minneをとおしてお二人の世界観に引き込まれた1ファンとしてお話をうかがいにきました。

和田 bonamiさんといえば、2015年のハンドメイド大賞で、編みりんご「世界一周トラベリンゴ」が協賛企業賞「日本編物工業株式会社賞」を受賞されました。 minneを知るきっかけにもなったのがこのコンテストだとお聞きしたのですが、当時はどのような制作活動をされていたのですか?

bonamiさん 純粋にりんごの編みぐるみをつくってInstagramにアップしはじめた時期でしたね。友人の雑貨屋さんに作品を置かせてもらったりしていました。「ハンドメイド大賞」の存在を友人におしえてもらって、はじめてminneのことを知りました。最初は、赤い普通のりんごをつくっていたんですが、「それなら誰でもできるよね」と言われてしまったことで、制作意欲に火がついて(笑)「普通じゃないりんごをつくってやろう!」と応募したのが「世界一周トラベリンゴ」だったんです。

bonamiさん 一次選考を通過して、青山スパイラルホールでのレセプションに招待されたときは驚きましたね。社会見学のつもりで現場に向かいました。

和田 ご主人の心境はいかがでしたか。

ご主人 まぁがんばって行ってこい、と。受賞するかはわからないけれど、たのしんでくれればいいかなと思っていました。結果的にその後の授賞式でいろんな作家さんにお会いしたことが、そのあとの活動につながったわけなんです。

bonamiさん そうなんですよ。同じ受賞者のLumiènaさんに紹介されて、いっしょにニューヨークの作品展に出品することになりました。せっかく作品が展示されるので思い切って現地へ見に行こう!という話になり、現地でギャラリーの方から「せっかく日本から来たならワークショップをやってみては」と提案をいただいて。そこから、いろんな展開が生まれましたね。

和田 すごいですね!それぞれのシーンで、思い切った一歩を踏み出されたからこそ、素晴らしい体験につながったんですね。「社会見学のつもりで青山に出かけた」ところから、とてもドラマチックな展開ですね。

bonamiさん 英語もろくにできない私が、ニューヨークではコネもアポもない状態で。そんな中でも、思い切って気持ちを伝えたり足を運んでみたことで、憧れのニットのアーティストの方にお会いすることができて、予想外の貴重な体験がたくさんできました。

和田 私も、会ってお話させていただきたい方はたくさんいますが、お忙しい方ばかりなので、ついつい尻込みしてしまうことがあります。行動力のたいせつさと、そこを助けてくれる作品の力のすごさを改めて感じました。

活動の拠点は、広島から松山へ

bonamiさん 今年、結婚して24年目なんですが、若いころから「いつかお店を出したい」という夢がありました。そんな想いを実は夫も持っていたんです。それぞれ雑貨をずっと集めていたんですが、お互いのコレクションを持ち寄ったら、同じものを購入しているせいで2つあったり。

和田 すごい偶然ですね!

bonamiさん 広島から松山に引っ越してくるときは、2人分のはずなのに引っ越し代が400,000円もしました・・・トラックが何台も・・・

(一同爆笑)

ご主人 いつかお店をつくって気に入ったものを並べたいという夢があったので。

和田 「場を持つ」というのは、やはり「好きなものを共有する場を持ちたい」という願いが大きいでしょうか。

ご主人 そうですね。広島では「一箱古本市」というイベントにずっと出店していて、そのころから「自分たちの好きな本と雑貨を売る」というスタイルをとっていました。そこでも、自分たちとそこで出会ったお客さんの間で生まれる「共感」「共通性」のようなものがあることは、感触として気づいていました。当時のお客さんが、松山のこのお店まで遊びに来てくれることもあり、共通の「好き」を通してたのしんでいただける、というのはとてもうれしい発見でしたね。

ご主人 物を売るだけではなく、出会いや体験を提供できるような場所をつくりたかったんだと思います。お店に来てくださっている方には必ず声をおかけするようにしているんですが、みなさん”好きなもの”について、たくさんお話ししてくださったり本当に毎回の出会いが面白いんですよね。松山の、特に若い方はシャイな人が多いな、という印象も持っているんですが、「行動起こす」と言うのは誰かがやってくれることではないので。たとえば、このお店がなにかの小さなきっかけの場になれば、と思っています。

イラストレーターの福田利之さんにつくっていただいたというお店のロゴも素敵です。

お店の奥の工房でつくられるジャム。

和田 いま、お店は手前が雑貨と本とコーヒースタンドで、奥にはジャム屋さんの工房が同居されていますね。最初からこのお店の空間はイメージがあったんですか?

ご主人 ひとつのものだけじゃなくていろいろなものを組み合わせて売ろう!と思って、コンセプトシートを作ったんです。それをもとに、家具とか内装はすべて自分たちで設計しました。棚の奥行きを決めるのが意外と難しくて、そのころはいつもメジャーを持ち歩いていましたね。レストランでも雑貨屋さんでも、立ち寄った先のあらゆる棚の奥行きを測らせてもらっていました(笑)。「本とコーヒーは相性が良いよね」という話にもなりました。

和田 コーヒーによって、お店に来る理由が増えるのは、とてもいいですよね。「また行こう」という気持ちにもなりますし。

ご主人 そうなんです。本と雑貨をハシゴして、ついでにコーヒーも飲める、という流れをつくりたくて。夢は大きく、ゆくゆくは「松山市の行くべき文化スポット」にしたいなと思っています。こうやってお店があると不思議な巡り合わせもあって、たまたまお店に置いていた20年位前のファッション誌のライターさんがお客さんとして来てくださったり。「ここ私が書いたページです!」と盛り上がりました(笑)。こういった出会いがあるのも、この「場」があるからこそですよね。

ご主人 「長居できる場所にしよう」というのもこだわりです。窓辺に席があって、カウンターの前にも机があって。あとは、「新しい什器の中に古いものを置こう」というのも決めていたんです。古い空間にシャビーなものをしつらえるというのもいいんですが、「古いものと新しいもの、お互いの良さが引き立つような空間」をつくりたかったんですよね。

和田 お店の中の空間作りや作家商品の魅せ方・伝え方がすごく考えられていますよね。「赤い金魚と赤いとうがらし」の絵本の横に唐辛子が飾ってあるとか、「伝えやすさ」みたいなところにちゃんと手をかけられていて、素晴らしいなと思いました。

ご主人 お店をつくって気づいたことなんですけれども、この店に来てくれるお客さんは普通の古本屋さんに入ったことがない人も多いんですよ。古書店に「入りにくいな」と感じていた人が来てくれているのかな…という印象もありますね。いろんなシーンで言えることですが、世の中にはたくさんの作品があふれているので、いろんな切り口で切り出して見せ方を提案することが、「すき」を発見してもらえる早道かもしれませんよね。

和田 お店で、これから実現したいことはありますか?

ご主人 人とのつながりをもっと増やしていきたいです。コミュニティのできる場、どんどん人がつながって広がっていく「起点」でありたいと思っています。

和田 bonamiさんにとっては、ものづくりはその「起点」になるためのツールのひとつなんでしょうか

bonamiさん そうですね。コミュニティの広がりが、私のものづくりのヒントやきっかけになったりするので。「好きなものに囲まれていたい」という気持ちだけではなく、「自分たちから発信したい」という気持ちと「みんなにも共感してもらいたい」という気持ちがあります。そのきっかけとしてこのお店が機能するとうれしいですね。

和田 bonamiさんにとっての「ものづくり」は、「忙しいからやらない」でも「暇だからつくる」というものでもなく、もっと日々の呼吸や食事をすることと同じような、なくてはならない当たり前のものにまで昇華されているように、今日お話ししていて感じました。

bonamiさん そうですね。編み物や裁縫をする母の影響も大きかったと思いますが、幼いころから「自分でつくる」ということが常にそばにありました。興味の向くままにものづくりを手がけて、「場所をつくる」というところにたどり着いたのがいま。でも、ゴールでもスタートでなく通過点なんだと思います。やってみたかったことを、ひとつ叶えたという感じですね。

和田 minneのハンドメイド大賞に応募くださったことから、今日このお店に座っていることまで、大きな繋がりのようなものを感じます。

bonamiさん 客観的な評価を得たことで、自分のやりたいことを見つめなおすきっかけになりました。やっぱり、いろんな人に作品を見てもらうことは大事ですね。これからも一層見てもらう機会をつくりたいと思いますし、実物を手に取ってもらえる場も増やしていきたいと考えています。

最後に、おすすめの本をおしえていただきました。

ご主人 僕たちの原点は「就職しないで生きるにはシリーズ」の「がらくた雑貨店は夢宇宙」です。この本が大好きで。でも、このシリーズを執筆している方々は、みんな1度は就職してるんですよ。なので、一度は就職した方が良いのかも、と思いつつ読むのもおもしろいと思います(笑)

bonamiさん、ご主人、貴重なお話をありがとうございました!

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